会長挨拶

医療機能と病院経営がうまくかみ合わないという、危機的事態があちらこちらで見られています。
ヒューマンサービスとして病院を社会のなかに位置づけるとき、原価概念、原価計算、原価管理の構築・運用は組織活動の基本であります。ここから病院経営戦略の可視化、課題の抽出と優先順位の設定、資源の確保、永続的な必要収益の確保、医療・経営の質の向上、等が担保されるのです。

日本の病院原価やその計算を考えるときに大きなふたつの問題に直面します。
ひとつは、もともと原価や原価計算は市場価格をもとにした概念であり仕組みであるということです。わが国の場合、国民皆保険制度のもとで施行される診療報酬は制度価格です。
果たして今まで、制度価格のもとで病院経営や医療の質に役に立つ、真の意味での原価計算があったでしょうか?それを保障する妥当な原価概念に基づき、目的に応じた原価計算・原価管理が病院経営の中で行われてきたでしょうか?
ふたつめは、病院経営におけるガバナンスの問題です。
ガバナンスと原価・原価計算には切っても切り離せない密接な関係にあります。いかに病院経営に有用な原価計算システムであっても、病院の社会的な存在意義や公益的な使命にもとづいて価値貢献を行うガバナンスの目的と運用がなければ経営は空転してしまいます。ガバナンスの目的と仕組みは原価計算の目的と合致するものでなければなりません。

このような問題認識のもとで、2009年7月、3年間の期限付きで「病院原価計算・原価管理研究会」が発足し、2012年3月に研究会本来の目的を達成し発展的に解消しました。
その成果のひとつとして病院原価計算の革新的な理論および実践的研究を「提言」として、より実用に供しやすいものとして「提言(実用版)」としてまとめ、これらを研究会のホームページに載せることとしました。
本提言は学際領域の衆智を結集したものです。新たなパラダイム転換を示し、未来にわたりヒューマンサービスとしての病院経営や医療の改革に光と方向を示すものと確信しています。

病院原価計算は幾何学でいう補助線の役割を果たしていると考えています。補助線を引くことによって、補助線それ自体の意味よりも、そこに見えていた構造の背景に存在し隠れていた構造が表だって見えてくるからです。

読者の皆様の自由な視点でご活用ください。ホームページを利用した意見交換も歓迎します。

2012年7月

病院原価計算・原価管理研究会 会長

岩﨑 榮

研究会概要

DPCの導入、公的病院の独立行政法人化など、昨今の日本の病院を取り巻く環境は大きく変化しつつあります。 大多数の病院では、赤字問題、人的資源管理など、経営そのものが問われており、それは国民の税金や年金という財政のあり方としても関心が集まっています。

にもかかわらず、現状の病院経営や医療の方向は不透明で、いわば海図なき海を航海する状況です。

一方、今後の病院経営は以前にも増して厳しくなり、それに伴い非営利組織である病院にも経営的な視点が一層重要になってくるのは間違いないことでしょう。

私たちは、今は、すべてのことが転換期にあると考えています。これまで機能していたルールや考え方がうまく働かなくなっているからです。

病院経営、医療・福祉経営の領域も例外ではありません。

このように大きな転換期には、今までの価値観やものの考え方の延長上には明日の世界は見えてはこないものです。従来の考え方を根底から考え直し、さらに自分自身が変わらなければ、自分や組織が成長し明日の世界を生きることは難しい状況です。

このような問題に直面したとき、私たちは、基本となる「ものの考え方」を直視することが大変重要であり、 方法やノウハウ・知識のみを集積し、それを適用するだけでは自分を変え、組織を変革し、新たな価値や文化を創ることは困難であると考えています。

以上のような現状認識のもとで、試行錯誤の実践を積み重ね分析した結果、私たちは今後の日本の病院経営の基礎には、経営課題の抽出とそれらの優劣を評価する方法を開発する必要があるという結論に至りました。

そして、そのなかでも特に「医療原価」の概念とその実践的な適用は、病院の経営基盤には必要不可欠なものであると位置づけています。

しかし、病院における現状の原価計算は、未だ費用管理に留まっています。私たちは、独自の視点から「医療原価」の学際的な研究とその実践的な方法の開発、更には、その運用を実際に行ってきました。

本研究会の目的は、病院・医療経営の基盤整備と質の向上に貢献するために、病院の戦略的な意思決定や各部署の原価管理に資するような 原価計算・原価管理の手法の開発と普及、およびこれを実現するために、従来の原価計算方法の科学的検討と利用法の実践的比較を行うことです。

したがって、この研究会では、病院関係者のみならず、様々な領域にかかわる各界、各職種の方々の広い参加を呼びかけます。

本研究会の趣旨にご賛同いただき、病院、個人の皆様のご協力、ご参加を発起人一同、心からお待ち申し上げています。

役員一覧

役員 (2011年7月~2012年3月)

会長

岩﨑 榮

NPO卒後臨床研修評価機構専務理事

元(財)日本医療機能評価機構理事

理事長 

竹田 秀

(財)竹田綜合病院理事長

副理事長 

福島 公明

宗教法人在日本南プレスビテリアンミッョン 淀川キリスト教病院常任理事 事業統括本部局長

相田 俊夫

(財)倉敷中央病院副理事長

理事

渡辺 明良

(財)聖路加国際病院事業管理部財務経理課 マネジャー

今中 雄一(都合により中途辞任)

京都大学大学院医学研究科医療経済学分野教授

栗原 徹

社会福祉法人エスポワールわが家理事長

(元)日本信販株式会社専務取締役

吉越 亘

株式会社コーポレイトディレクション取締役 ファウンダー

事務局担当理事(事務局長を兼務)

田原 孝

日本赤十字九州国際看護大学特任教授 医師

会計担当理事

平井 孝治

立命館大学BKC社系研究機構特任教授

評議員

田崎 年晃

社会福祉法人恩賜財団済生会熊本病院医療支援部医事企画室長

武田 隆久

武田病院グループ理事長

山根 哲郎

パナソニック健康保険組合松下記念病院院長

松澤 佑次

(財)住友病院院長

齋藤 壽一

社会保険中央総合病院名誉院長

須古 博信

(社)恩賜財団済生会熊本病院名誉院長

尾形 裕也

九州大学大学院医学研究院医療経営・管理学講座教授

杉崎 富夫

札幌社会保険総合病院事務局長

矢野 順治

健康保険南海病院庶務課長

日月 裕

日本福祉大学福祉経営学部医療・福祉マネジメント学科教授 医師

山﨑 不二子

福岡女学院看護大学看護学部看護学科教授 看護師

清岡 佳子

福岡県看護協会専務理事 助産師

監事

安道 大介

ワタキューセイモア株式会社業務企画室経営企画課課長

佐藤 浩人

立命館アジア太平洋大学国際経営学部准教授

主たる事務局

京都大学大学院医学研究科医療経済学分野 今中雄一研究室(都合により中途辞任)

会計事務局 

立命館大学BKC社系研究機構 平井孝治研究室

事務局担当

清土 裕文

ナレッジデータサービス株式会社 代表取締役



継続役員 (2012年4月~) ※その他の評議員、理事は引き続き積極的に研究会活動を支援する。

継続顧問

岩﨑榮

NPO卒後臨床研修評価機構専務理事

元(財)日本医療機能評価機構理事

継続理事長

竹田 秀

(財)竹田綜合病院理事長

継続理事

相田俊夫

(財)倉敷中央病院副理事長

渡辺明良

(財)聖路加国際病院事業管理部財務経理課 マネジャー

田原孝

医療・福祉基盤研究所代表 医師

事務局担当

清土 裕文

ナレッジデータサービス株式会社 代表取締役

活動履歴 (2009年7月から現在まで)

総会の開催

2009年7月12日(日) キャンパスプラザ京都(京都) 設立総会(第1回総会)
2010年7月12日(土) 虎ノ門琴平タワー3階会議室(東京) 第2回定時総会
2011年9月11日(日) 虎ノ門琴平タワー3階会議室(東京) 第3回定時総会
2012年3月24日(土) 虎ノ門琴平タワー3階会議室(東京) 第4回定時総会

理事会・理事懇談会の開催

計11回

研修会の開催

計3回

プロジェクト研究会の開催

計29回

研究発表

2011年7月15日(金) 日本病院学会 ワークショップ3  「真に役立つ病院原価計算を求めて」の発表

提言の作成と提言の配布

2011年10月 「提言 新たな視点による病院原価計算・原価管理」を公開
2012年7月 「提言 新たな視点による病院原価計算・原価管理(実用版)」を公開

論文ダウンロード

当研究会の成果を提言としてまとめました。ご自由にダウンロードしてご覧頂けます。

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